富山大学の久米利明教授とは、ジンセノサイドではない高麗人参の有用成分について研究しています。その成分は「パナキシトリオール」といい、1980年代に紅参から発見されました。生の高麗人参に全く含まれず、紅参へと加工する過程で誕生します。
久米教授との研究では、パナキシトリオールと神経変性疾患に関わる「ミクログリア」という細胞について調べています。ミクログリアは脳に存在する細胞の一種。傷ついた細胞を貪食する働きを持っており、別名「脳内のお掃除屋さん」と呼ばれています。一方で、ミクログリアの働きが過剰になると、炎症を起こして周囲の神経細胞を損傷させます。そのため、ミクログリアの過剰な働きを抑えることは、神経変性疾患の症状を緩和させる1つの手段として有用であると考えられているのです。
今回は細胞実験と動物実験を行いました。その結果、パナキシトリオールには神経保護作用があり、ミクログリアの活性化を抑制することがわかりました。神経保護作用とは、神経の変性を起こしにくくしたり進行を遅くする作用のこと。この作用により、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の症状を緩和することが期待できます。
この内容を論文化されて学術雑誌『Journal of Pharmacological Sciences』及び『Biological and Pharmaceutical Bulletin』に掲載されました。